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クラリネットが大好きな君へ -初心者からのクラリネット-

後輩への15の問いかけ

この文章は大学オーケストラを引退(卒団)するにあたって、
早稲田大学交響楽団の後輩たちに贈った言葉です。

その後、富士高校の後輩たちの指導の際にも何度か配ったものです。
何かの参考になれば幸いです。


「卒団するにあたって -後輩への15の問いかけ-」岩下敦哉


これから私は、みなさんにとって「あたりまえなこと」「わかりきったこと」をお話しします。
特にオーケストラに疲れた時や疑問を感じた時などに、「もう一度自分を見つめ直すため」に読んでみてください。

<謙虚でしょうか>

まず、自分に対し、様々な場面や場所において、あらゆる点で謙虚になってみる。
それから物事を始めるとうまくいくと思います。

それから、私たちはオーケストラをやっているので、
まだまだ謙虚にならなければならない相手があります。

音楽に対し、作曲家に対し、譜面に対し、そして私たちの音楽を聴いてくださる人々に対してです。

それが「アマチュア音楽家の心意気」ではないでしょうか。


<さらうこと>

みなさん、もっとさらいましょう。

私も今まで以上に真剣にさらいます。

時々「この人はもしかして、さらってないのかな」という人を見るとがっかりします。

「さらう」というのは、「今より良い演奏をするための努力の過程」を指します。

ですから、「さらってない人」というのは、「この努力を怠っている人」のことです。

また、「さらい方」にもいろいろあります。
「長くさらう」「短くさらう」「毎日さらう」「時々さらう」
「一人でさらう」「多人数でさらう」など。

でも、「さらうことに対する評価」は、
「さらう前とさらった後の相対的な到達度」で決まると私は思っています。
決して、「それにかけた時間」ではありません。

「さらい方の下手な人」、「進み具合の遅い人」はたくさんさらわなければならないし、
「さらい方の上手な人」「進み具合の速い人」は少しさらうだけで同じ効果が出るでしょう。
いずれにしても、自分にフィードバックする度合が大きなポイントとなると思います。

もう一度おたずねします。「あなたはしっかりさらってますか。」


<持ち駒をくさん持っていますか>

持ち駒というのは、もちろん音楽に対してですが、
たとえば「あなたはいくつクレッシェンド持っているでしょうか」「いくつアタックを持っているでしょうか」。

音楽を表現するために、自分がどれだけ表現方法を持っているか考えてみてください。

「使う、使わない」は別として、
技術や知識は決して無駄にはならないので、たくさん手に入れましょう。
持っていないものは、選んで使うことはできません。

クレッシェンド1つをとってみても、始めと終わりの「音量の差」、「音質の差」、
(「音程の差」...人間の耳には効果がある。)クレッシェンドの長さ、開き具合、スピード
あるいは曲線で表現されるべきクレッシェンドにおいては、無限の表現方法があると思います。

そのうち自分でいくつ表現できるかを考えてみると、きっと少ないのではないでしょうか。

 

<楽器と身体は資本>

私たちにとって、楽器と身体は資本です。大切にしましょう。
残念なことに楽器の健康管理に無頓着な人がたくさんいます。
身体のことは、まわりの人から言われて気をつかっている人は多いと思いますが、自分のパートを見ても、楽器が病気になっている人、されに気づかない人がいます。
私もみなさんと同じように、楽器を「恋人」のように思っているので、毎日吹いています。
ですから、彼女の体調も手に取るようにわかります。
吹き方が足りないと「すねて」美しい音を出してくれません。
また、私の体調が悪いときは、一緒に悪くなって、音色がくもったり、鳴りのポイントがずれたりします。
楽器も生きていますから大切にしましょう。

 

<道具を選ぶこと・信じること>

良い道具を選びましょう。
良い道具を使わないと、納得のいく演奏はできません。
クラリネットだったら、「良い楽器」「良いマウスピース」「良いリード」「良いリガチュアー」(「良いアンブシュアー」「良いコロンデール」)などがまず考えられます。
「良い道具」というのは決して「高価な」という意味ではありません。
自分にとって「合っているもの」ということです。
私の楽器は、ヤマハの安いモデルですが、とても良い楽器です。高価な楽器を持っている人よりも吹きこなしているつもりです。
また、道具をやたらと替えたがる人がいますが、あまり良くないと思います。
例えば、私の場合は、5RVというマウスピースを5年吹いて、さらに5RVと5RVライヤーの2本立てで5年間吹いています。
その環境の中で様々な技術を使っています。
もちろん、他のマウスピースも研究していますが、「道具における自分」というものをしっかり持っています。
まず初めにじっくりと道具を選んだら、その道具を信じ、その環境で「自分の枠」を広げていき、「道具における自分」というものをしっかりと持ってほしいと思います。

 

<楽器の都合、コンディションの悪さを乗り越える>

どんな楽器にも「楽器の都合」というものがあります。
音程や音量変化、アタックのポイント、運指など、このほかまだまだたくさんあります。
楽器によって、得意、不得意はありますが、お互いそれを主張していても仕方がありません。
何とか工夫して乗り越えましょう。
あなたはその努力をしていますか。
また、道具のコンディションが悪い時があります。
本当は、常に「最良のコンディション」であることが望ましいのですが、なかなかそうはいきません。
例えば、私の場合、リードが「気温」「湿度」「気圧」などによって大きく変化しますし、「楽器の鳴り」や「ピッチ」も変わります。
そこで私は考えるのですが、「楽器の都合」や「コンディション」は、「どんなに悪くても、このくらいの演奏はできる」という最低のレベルを設定し、そのレベルを練習や努力によって高めていったら良いのではないでしょうか。


<時間をかけないとできないこと>

「楽器を演奏するにあたって大切なこと」は、時間をかけないとできません。
例えば、「いい音を出すこと」。
自分で「素敵だな」と思える音を奏でるのは、とても難しいことです。
常に自分の音を聴き、工夫し、悩み、たゆみない努力と時間が必要です。
逆にそれほどの時間をかけなくてもできるのは、「指をまわす」ことや「音程を合わせること」です。
指は正しくさらっていれば、必ずまわようになるし、音程もきちんとした音程感覚のある人なら、ちょっと気をつければ合うようになります。
多くの人は、このようなことにとらわれすぎて、「時間をかけないとできないこと」をおろそかにしています。
この他に、私が「時間をかけないとできないこと」と感じたことは、「自分とまわりを聴く耳」「自分とまわりをみる目」「合奏における相互の信頼」などです。


<楽器を持たない練習>

あなたは「楽器を持たない練習」をしていますか。
実はこれがとても大切なのです。
例えば、「口で唄えないのに楽器でできるはずがない」とよく言われます。
私も新入生の時、全体練習で「良いお手本」として唄わされたことがあります。
この他にも、「イメージトレーニング」「運指だけの練習」「他の音を聴く」「演奏について、人と話たり、考えたりする」「自分の評価を聞く」「譜面を読む」「他の人の苦労話を聴く」など、むしろ楽器を持たない練習の方がたいへんだと思います。
大切にしてください。


<スランプについて>

あなたは「スランプ」になったとがありますか。
今まさにスランプという人もいるでしょう。
私もそうです。
もし、スランプになったことがない人がいたら、「かわいそう」ですね。
なぜなら、「スランプ」というのは、「自分の要求水準の高さ」と「現在の実力」の差を認識するところから生まれてくるからです。
あなたがはじめて楽器を手にした時のことを思い出してください。
なかなか音の出ない楽器もあったでしょう。
でも、初めて音が出た時、とてもうれしかったはずです。
そのうち「ドレミ」を覚え、曲が演奏できた時は、とても満足したと思います。
音の強弱をや様々な表現を少しずつ覚えてくると、「もっといろいろなことができるようになりたい。」「もっとうまくなりたい」と思ったはずです。
最初に「音が出ただけで満足していた自分」は何と要求水準が低かったかと自覚できます。
また、乗り越えるべき壁が「いかに低かったか」もわかります。
その壁が、うまくなればなるほど「厚く」そして「高く」なっていきます。
ですから、だんだん乗り越えるのが難しくなるのです。
「さらえばさらうほど吹けなくなる」という不思議な現象に私は直面し続けています。
「何も恐れずに吹けていたあの頃がなんて幸せだったのだろう。」と思うこともあります。
私の最も長いスランプは1年半も続きました。でもその時、「自分もこんなに長いスランプが来るほど成長したか」と思ってがんばりました。
スランプは、問題意識がなく、要求水準の低い人にはやってきません。
もっとスランプを楽しみましょう。
また、「自分の限界が見えた」と思っている人は、本当にそうでしょうか。努力を惜しんでいるだけではないでしょうか。
もっとうまくなってから「限界」を語ってください。


<自分の役割について>

特に「のり番」において、自分の役割を果たしていますか。
私はクラリネットなので、自分のパートで言うと、特に「2番」というのり番をもらった人、がんばってください。
そして、その役割を誤解しないでください。
よく「2番は1番に合わせるものだ」と言われますが、少し言葉が足りないと思います。
この言葉からは、2番は1番の吹き方、やり方がどんなに自分勝手であろうとも、それに必ず合わせ、自分と言うものを殺し、1番に従って演奏しなければならないという極端な受け取り方もできないことはありません。
でも全く違います。
1番と2番は基本的に「対等」です。
1番と2番は、「2番がただ1番に合わせる」だけの関係ではありません。
「一緒に吹く」のです。
1番の人の吹き方に納得がいかなければ、とことん問いつめればいいし、自分の吹き方に自信があれば、しっかりした根拠に基づいて、1番の人と話し合えばいいのです。吉田行地君のことばを借りれば、「ひじで突っついてやる」くらいでいいのです。
2番をもらった人は「とにかく1番につければいい」というだけでは無責任ではないでしょうか。
ただ、1つ忘れてならないのは、ステージに上った時は、「他のパートとの窓口」として働いている1番に合わせなければならないということです。
それまでに十分話し合ってからステージに上れば、1番の人も決して裏切ることはないでしょう。
信頼して「合わせましょう」。
次に「アシスタント」というのり番をもらった人、「アシ」という役割がわかっていますか。
「アシ」というのは「アシスタント」のことであって、決して「アシでまとい」のことではありません。
少し荒っぽい言い方ですが、アシスタントののり番をもらった人は、「とりあえず全部さらって」、「練習でたくさん吹かせてもらって」、「いつでも私が吹いてあげますよ」と言ってみましょう。
その理由は、「ff以上のところをさらっただけでは、その部分が曲の中でどのような位置づけなのかがわからないということ」、「実戦を通して感覚を養うということ」「しっかり責任をもってさらうということ」が挙げられます。
1番の人については、「わかってますね」。
私はワセオケでは、2番もアシスタントも吹いたことがないのに、偉そうなことを言ってしまいました。

 

<ステージ上ではみんな対等ということ>

ステージの上に自分の席がある人は、プレイヤーとしてみんな対等です。
4年生であろうが、1年生であろうが関係ありません。
先輩に遠慮して自分を殺したり、ものを言わないのはよくありません。
先輩も後輩の良いところは「十分認め」、「きちんと評価し」、「見習う」ことを忘れないように。
私も後輩に教わることがたくさんありました。
また、「後輩」の立場の時も先輩に対し、数え切れないほどものを言いました。
常に謙虚になり、真剣にさらった上で、「自分が一人のプレイヤーである」ということをしっかりと自覚しましょう。


<頭はクールに、心はホットに。>

演奏中よく見かけますが、「熱が入りすぎて、頭に血がのぼってしまっている人」がいます。
きっとまわりのことが見えていないのでしょうね。
ひょっとすると、自分の譜面すら「真っ白」になってしまっている人もいるのではないでしょうか。
きっと後で「実力を出し切れなかった」と悩むことでしょう。
逆に、何も感じないかのように、ただ譜面を追いかけているだけの人もいます。
余裕がないのでしょうか。音楽で何も語りたくないのでしょうか。
私はどちらも良くないと思います。
そこで提案です。
「頭はクールに、心はホットに。」
そこからいい演奏が生まれてくるのではないでしょうか。


<拍手は「自分ががんばった分」しか心に届かない>

演奏会でお客さんに拍手をもらった時、あなたにはどのように聴こえますか。
同じように拍手をもらっているのですから、全員同じなのでしょうか。
私はそうではないと思います。
それまでに自分がどれだけさらったか、どれだけ働いたか、どれだけがんばったか、それによって心に届く拍手が違ってくると思います。
がんばればがんばった分、拍手が自分の心に伝わってきます。
私もワールドツアーや先日のサントリーホールでの拍手は「痛い」と感じるほど、「強く」「深く」心に届きました。
やはり、「自分はごまかせない」ということでしょう。
あなたはどうですか。


<いいオーケストラを体験したことがありますか>

先日のサントリーホールでの演奏会で、特に「英雄の生涯」では「いいオケだなぁ」と思いました。
実は、私のバスクラリネットは、メカニックの故障で音が5つ、6つ出ないという「クラリネットこわしちゃった状態」で出てしまったのですが、とりあえず輪ゴムやテープなどで「なおして」、あとは使えるメカニックだけの「替え指」という最悪のコンディションでした。
でも、「いいオケ」を体験できました。
「誰かのソロがいい」とか「誰かが音をはずした」などということは吹き飛んで、「私はこのオーケストラの中にいます」という気持ちになりました。
とにかく「感動しました」「涙が出ました」
ぜひみなさんにも体験してほしいと思います。


<惜しみなく後輩に教える>

あなたは、あなたの技術や知識を自分だけのものにしていませんか。
もしそうだとしたら、「もったいない」ことです。
どんどん後輩にわけてあげましょう。
教えてあげたからといって、あなたが損をすることは何もありません。
むしろ、自分の持っているものを再認識するとともに、教えたことに責任を持つことによって、あなたの技術や知識はより確かなものになるでしょう。
さらに後輩も上手になれば、こんなにうれしいことはありません。
また、「間違っているのではないか」「こんなことを教えていいのだろうか」と誰もが悩みます。
でも、自分が実践しているのならば、自信を持って教えてあげてください。
後輩にとっては、それが「ひとつの選択肢」となるでしょう。
それから、上級生の人たちには次のようなことに気を配っていただきたい。
「教えたいこと、直したいことの中から、まず何から伝えたらいいか」を考え、教えたら、「そのうち何ができていないか」を確認し、「次に何を教えたら良いか」を考えること。
そして、何よりも大切なのは、できるようになったことを「しっかり認めてあげて」、「しっかりほめてあげる」こと。
私は後輩が成長したのを見ると、とてもうれしく思います。


最後に、みなさんどうもうりがとうございました。
特に、岩田邦彦君、清水祐介君、千野彰子さん、雪田美香さん、それから吉田行地君には本当に感謝しています。
どうもありがとう。
クラリネットパートのみなさん、とても楽しい想い出をたくさんありがとう。
クラリネットパートは「なかよしパート」です。

そして、ワセオケの4年間にもありがとう。


岩下敦哉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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